読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

関根デッカオ's 不肖動静

筆者の頭部に、大きさなりのはたらきを見せてもらおうという試みです。

期せずして塩屋

日記 お店

  関西圏の私鉄が乗り放題の切符をもらっておきながら、だらだらと有効期限その日まで使わずにいたので、強引に外出してきた。おとといのことである。その昔であれば、ハッと行く先が思い浮かびもしたのだけれど、いまはそういうわけにもいかず、さしあたりエリアマップ最西端の姫路へ向かうことに。しかし道すがら、人身事故のために途中下車を余儀なくされる。

 

 期せずして降り立った、山陽塩屋駅異人館の類がパラパラと見られる、オーシャンビューの街である。ここに来るのは、1年半ぶりくらいのことかしら。さほど空腹というわけでもなかったが、改札を出てすぐのところにある食堂・しろちゃんののれんをくぐる。くぐらずにはいられぬ店構えだったのである。

 

 入店するなり目につく冷蔵のショーケースは、さほど大きいものではないながらも、実に正しい佇まい。これでもかとばかりに結露していて、外からは内容が確認できない点が微笑ましい。音割れのひどいラジオからは、うろ覚えのサザンが流れている。食堂の名を語るにあたり、何らの不足を感じることのない店内の風情は、一見の僕をもやすやすと受け入れてくれるかのごときである。壁一面真っ白で、申し訳程度の観葉植物が低密度で配されたカフェなどに、同じ芸当ができようか。午後2時まではサービス定食が提供されるとのことで、その名もズバリ「しろちゃん定食」を、酎ハイとともにオーダー。天ぷらの盛り合わせに煮物、小鉢等々、550円とは思えぬ品数に圧倒される。なんとまあカタストロフィックな価格設定なのであろう。いざ実食。酒との兼ね合いで、ご飯は少なめにしてもらったものの、久しぶりに米の飯をおいしく食べられたように思う。近所にあれば、まず間違いなく通っていたことであろう。なるはやでご飯を片付け、残ったおかずと客のおっさんのぼやきを肴に、スローペースで追加の酎ハイをあおった。〆て1000円と少し。また来ようと思う。

 

 体調の加減からか、早々に足元がおぼつかなくなった僕は、ふらふらと漁港に向かった。海を見て、何がどうなるというわけでもないのだけれど、海を見たくなってしまったのだから仕方がないのである。前日とは打って変わって好天。凪いだ海面に、釣り人の垂れた糸が、音もなく吸い込まれていく。釣果はそれほどでもなさそうだ。レジャーボートが行き交い、対岸の淡路島上空には飛行船の姿が認められる。浮ついた日曜の午後、こちらの次なる行き先は未定である。本来なら、もっとゆっくりあれやこれやについて思いを馳せたいところではあったが、そう時間も経たぬうちに寒気および尿意、ならびに便意を催す。ロマンチシズムは、生理現象の合わせ技に少しも抗うことかなわず、僕は駅へと続く道を急いだ。

 

 用足しを済ませ、進路を東に取った。新開地をぶらつき、光線という喫茶店に入る。仁川で競馬の何たら賞をやっているらしく、マスター夫婦含めにわかに活気づく店内。門外漢ながら不思議と場違いな思いをすることもなく、自然とレースに見入ってしまう。常連のおっさんが、そこそこに勝ったようである。これがスポーツバーなら…といった話は、無粋の念押しになるので省略しよう。エデンにてハシゴ喫茶する算段もありはしたが、胃の容量がそれを許さず、福原を冷やかしたうえで無念の帰阪とあいなった。人と会い、内定辞退の決意を固めた。