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関根デッカオ's 不肖動静

筆者の頭部に、大きさなりのはたらきを見せてもらおうという試みです。

上京抄

日記

 慣れない装束に身を包み、街を歩く機会が立て続けにあったせいか、身体各所がこわばっている。おととい、先を案じて上京したのに、その核心部分についてはあまり覚えていない。初対面の男衆と相対して、思ってもいないこと、わずかばかりの思っていること、その他諸々を伝えたはずなのだけれど、仔細に振り返ろうとすると難儀する。遠い遠い昔のことのように感ぜられる。自分にとって都合の悪いことは、こうやってずるずるに溶け出してゆくのだろうか。

 とにかく1日中疲れていた。行きの新幹線からそうだった。特に記憶があやふやな時間帯を無視して、何があったのか、何をしたのか、書き出してみることにしよう。

 

・大手町の洋食屋で、カツカレーを食べる。相席のビジネスパーソン2人組は、熱心に経済談義。職場談義。年の瀬談義。断じてふざけているわけではなさそうだ。

・クレジットで立て替えていた東京までの交通費を手渡される。キャッシュが増えて、バブリーな気分になる。

・上野の多目的トイレのお世話になる。あらぬ使い方をされないよう、籠城15分で自動的にドアが開くらしく、切迫感ある用便を迫られる。

・鬱屈とした気分をまぎらわそうと、吉原を訪ねる。ろくに地図を確認しなかったために、余計に歩く羽目になる。途中、三ノ輪の鈴木酒販に酒を求め、満を持して花街へ。「写真だけでも!」とは、客引きのおっさん連中。飛田の顔見せシステムがいかに合理的か、いやほど思い知らされる。実際、利用したことはないのだけれど。足が痛む。

・文化人の集いしところと評判の喫茶店を訪ねるも、入るなり安藤裕子によるオザケンのカバーを聴かされ、辟易する。

・神保町の書泉グランデ。異様なほどに足元をふらつかせながら、6階へと続く階段を上がる。下りもプルプルしているのがよく分かる。

・帰りの新幹線。本来ならビールでも飲みたいところだが、消化器系がそれを許してくれない。寝過ごすことを勘案して博多行きをパス、新大阪行きに乗り込むも、まどろむことさえかなわぬままに帰阪する。

・ごたぶんにもれず、まっすぐ帰る気になれない。固体がノドを通らないので、身のほどをわきまえずにバーへ。短髪ナイスミドルのマスターにあいまいな希望を伝え、悪い酒を飲む。

・寝る。

 

 改めて見返すと、何かしらはしているように見える。してはいるのだけれど、どうだろう。いずれにしたって、その場しのぎではないかしら。ともかくも、結論を急ぐことはないはずだ。釈然とせぬ気持ちを抱えたまま、食うに困って頭を下げまくるのは、よほど不健全なことだと思いたい。無理やりにでも、そうしたい。

 やけに心音が耳障りな夜。寝る。