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関根デッカオ's 不肖動静

筆者の頭部に、大きさなりのはたらきを見せてもらおうという試みです。

無職とカレーと

随筆

 先だってからしつこいくらいに繰り返してきた話だけれど、ついに労働契約の期間が満了した。僕は自動的に失職し、晴れて無職、否、自由の身となった。

 

 世界が輝いて見える。なぜなら、今日も変わらず世のカレーはおいしいだろうから。僕が職に就いているか否かなどといったつまらぬことは、人類知の結集であるところのカレーの味わいに、少しの影響さえ及ぼさないだろうから。今日も無職だ、カレーがうまい。今日も無力だ、カレーがうまい。当然である。この事実は誰がどうしようと試みても、断じて揺らぐことがない。発汗した頭皮をすっと駆け抜ける風、その心地よさは、無職もロックスターも同じなのだ。

 

 しばらくは貯金を切り崩す日々が続く。困ったことに、いつだって預金残高はサプライズ演出がお好きなようで、ATMの前に立つごとに僕は目を丸くさせられる。ゆえにカレー1食に約1000円は、いまの僕には不相応なぜいたくのようにも思える。しかし、表へ出る理由づけになり、結果として自室での余計な煩悶を避けることもできることを考慮すれば、決して高い出費ではないはずだ(こういうのを一般に屁理屈というのかしら)。

 

 これから先の暮らしをどうするか、履歴書と職務経歴書を提出したくらいでは、具体的に展望することはかなわない。一方で、好みのカレー屋で供されるものから得られる満足感に関しては、おおよその見当がつく。何事もコンディショニングが肝要なのだそうである。ならば僕も、雑念のために霞みがかった頭をどうにかしなければなるまい。だから、再び不自由の身に転じるに先んじて、まずはカレーという名の大海に身を委ねることから、すべてを始めるべきではなかろうか。そんな気がしている。