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関根デッカオ's 不肖動静

筆者の頭部に、大きさなりのはたらきを見せてもらおうという試みです。

サンキュー、ロング・ピース

随筆

 これはもう自分が原因というよりほかないのだけれど、つい最近、相当に頭を打つできごとがあった。相当に頭を打ったわけだから、回復のペースも恐ろしくノロノロだ。即座の解決は望めずとも、当面、問題そのものを直視せずに済むような手立てを見つけないことには、いよいよ体に障りそうな気がする。

 

 物に当たることをもって、カタルシスを導き出そうとするやり方がある。僕はかねがね、この方法について「あかんやろ」と思っていたのだが、最初から万策尽きているような状況に耐えかねて、ついやってしまった。世に言う杉内式メソッドを実践してしまったわけだ。おかげで右手小指が鈍く痛む。選手生命の危機であるが、これぞまさしく因果応報ということなのであろう。

 

▲杉内式メソッド発案者本人による模範例

 

 自らの愚行を、さらなる愚行でどうにかしようという試みは、当然ながら失敗に終わった。ならば次なる一手を打たねばなるまい。いまはとにかく、気をまぎらわせなければならないのである。そこで思い当たったのは、最寄りのコンビニに行き、知ったような顔でレジのお姉さんに「109番」などと告げることであった。つまり、齢26にして初めてタバコに手を出すと、心に決めてしまったのだ。

 

 浅はかで短絡的な思いつきに、前知識など伴うはずもない。セッタがどう、マルメンがこうといった話とは、これまで無縁にやってきたのだ。しかし、いざコンビニを訪ねてみると、迷いは消えた。レジカウンター越しに、ズビビッと訴えかけてくるクリーム色のパッケージ。いわゆるロング・ピースというやつを、僕はジャケ買いした。

 

 帰宅し、ベランダに出た。普段はお香に火をつけるためのライターで、いそいそと着火。循環器系を過剰に意識しながら、その紫煙を体内に取り込んだ。−ムムッ、これはどうだろう。存外にむせるようなことがないのには安心したが、とにかくノドが渇く。2口、3口とやるうちに、もうカラカラである。喫味がどうこうと論ずる以前の問題だ。酒だ酒、酒持ってこい、結局そんなところに落ち着きそうになる。いや、気付けばもうそこに落ち着いている。ノドと同時並行に国庫が潤う。それも平素の倍速で。僕が望んだのは、こういう結果だったのだろうか。北からの風に押し戻された副流煙を顔いっぱいに受け止めながら、自問した。

 

 ベランダから室内に戻る。どうも僕は愛煙家たりうるための要件を欠いているらしい。そのように思われてならない。食卓に置いたタバコを見やりながら、冒頭書いた問題に関して、僕は再び悶々たる心持ちになっていた。しばらくはこんな具合なのだろう。が、少しの間とはいえ、気を散らしてくれたロング・ピースには、謝辞を述べておかねばなるまい。どうもありがとうございました。